「回答ではない」と書かれた回答をどう扱うべきか
その回答が本当に回答ではないならば、削除のためのモデレーションが行われるべきだと考えます。これには、質問に対してさらに質問を返すような回答や、自己解決した旨だけが書かれ、具体的な解決策が述べられていない回答などが含まれます。また、「回答ではない(あるいはその可能性がある)」と回答に書かざるを得ないような不明確な質問であれば、その質問自体が改善される必要があるとしてクローズされるべきです。たとえば、回答者が十人十色の仮定を置いた回答をしなければならないケースでは、質問自体が改善されなければ議論が発散してしまい、有益性を欠いたQ&Aになってしまうかもしれません。
一方で回答として十分な品質ならば、モデレーションによって削除するかどうかは慎重に判断されるべきです。ここでいう品質とは、回答が質問に答えているかどうかであって、技術的な真偽や有益性は重要ではありません。それらは投票によって評価されるべきです。誤った回答が単に削除されるのではなく、マイナスにスコアリングされた状態で残っていれば、Q&Aの将来の読み手にバッドプラクティスを伝える効果もあるでしょう。また、「その疑問に対する答えはここでは得られないだろう」や「現状ではそれは未解決の問題です」といった趣旨の回答も、その論拠が提供されていれば質問に対して十分に答えているものと考えます。
ただし、その投稿が回答として機能するにも関わらず、「回答ではない」と書かれていることによって、読み手の判断に錯誤を与える可能性があります。そのような理由でのマイナス投票は正当なものだと考えます。
本質的には『「回答ではない」と書かれた回答』全般に対する対処法を議論するのは難しいと考えます。なぜなら、質問の内容によって回答に求められる具体性や有益性も変化するため、どうしても個別の事例で議論せざるを得ないことが多く、「回答ではない」と書かれている事実だけでなく、その他の文脈も含めた議論が必要になるためです。
すべてのケースを包括的に議論すると発散してしまう恐れがあるため、質問文やリンク先の実例を踏まえて、私が本質問で問題になっていると考えた次の4つの事例に関して取り上げます。これらのいずれのケースでも私の基本的な趣旨は上述したとおりですが、もう少し意見の詳細を書き加えたいと思います。
- 「実際には実行して試していない」回答
- 「役立つ回答として見られるのは困るので "回答ではない" と書いている」回答
- 「質問者に試してもらいたい内容」を述べている回答
- 既存の回答を評価・要約する回答
「実際には実行して試していない」回答
試していないからただちに回答ではない、と結論づけられることはないと考えます。
それは実際には正しく動くかもしれませんし、動かなくとも十分に意図が伝わる内容かもしれません。質問で提示された問題を解決するための道筋を示せているのであれば、読み手に対して十分な有益性をもたらすでしょう。
さきほども述べた通り、技術的に不正確であったり、完全に間違った答えであったとしても、それが質問に答えようとしているのであれば、回答として成立しているものと考えます。技術的な真偽は回答に対する投票で決めるべきです。その投票を受けて回答者本人が回答を削除するのは自由ですが、モデレータやユーザが削除したり、削除するように働きかけたりするのは過剰なモデレーションにあたると思います。
「役立つ回答として見られるのは困るので "回答ではない" と書いている」回答
回答者本人が困るかどうかは関係なく、有益な回答は評価されプラス票が集まるべきです。
もちろん、「回答が想定よりも評価されて困るから回答を削除する」という行動をとるのは、回答者本人の自由です。しかし、もし回答者の意向に従って回答の評価自体が左右されるのであれば、多くの参加者にとって有益なコンテンツを上位に表示しようとする、スタック・オーバーフローの評価システムそのものが崩壊してしまいます。そのような趣旨の要求が投稿者からなされたとしても、本サイトの趣旨からして許容できないことは明白です。
上でも述べた通り、「回答ではない」と明確に記載していることによりマイナス評価がなされることもあるでしょう。しかし、その一文のみで回答として不適切とされた上に、削除のモデレーションがされるほど致命的なものではないと考えます。
「質問者に試してもらいたい内容」を述べている回答
これは「何を試してもらいたいのか」により結論が変化すると思います。
たとえば「Xというエラーが出るのを直したい」という質問に対して「原因を絞り込むためにソフトウェアYのバージョンを確認してください」という、「質問者に試してもらいたい内容」を回答をしたとします。これは直接的に問題を解決する方法を述べているのではなく、トラブルシューティングの一過程で実施してほしい作業を助言しているだけです。そのため回答ではなくコメントとして投稿されるべきで、コメント化や削除のモデレーションが行われる可能性が高いと思います。
一方で、「その問題を解決するために、この方法を試してみてください」という趣旨の回答は、質問への直接的な回答を提供しており、たとえ実際には問題を解決しなかったとしても、回答として成立していると考えます。もし質問に何らかの不備があり、回答者が様々な仮定を行ったうえで回答しなければならない場合は、質問がクローズされ、改善されるのを待つのがあるべきプロセスだと思います。しかし、質問者が十分に情報を提供しているなかでも、真の原因が絞り込めないことは往々にしてあります。そのような場面で回答者が各々の経験的知識から導き出した仮説を回答として投稿することはナレッジの蓄積という観点からも有益だと見なせるのではないでしょうか。
言うまでもなく、「この方法を試してください」とだけ回答するよりも、なぜそれを試してほしいのか、質問文の状態から何を変えたのかを説明し、回答により説得力を持たせるほうが、ナレッジの蓄積という観点からは好ましいでしょう。しかし、これができていないから回答ではないというのは厳しすぎる基準だと感じますし、これをもってマイナス投票がされることはあっても、削除してしまうのは行き過ぎたモデレーションになると考えます。
既存の回答を評価・要約する回答
すでに何度も述べていることですが、このような種類の回答についても同様に、質問や回答の文脈により受け入れられるかが変化すると考えています。
他の回答が提示したコードを単に並べ立てるだけの回答でも、便利な要約と言えなくはないかもしれません。しかし、それが新しい情報や視点を提供するものではないならば、回答としては低い品質と見なされても不思議ではありません。ただしそれがモデレーションによって削除されるかどうかは、個別に判断されなければならないと思います。
一方で、「以下のように性能を評価した結果から、Xという条件のもとでは、Yの手法がより適切です」という形式で、一方の回答がもう一方よりある視点では優れているとする論拠を示す回答は、回答として成立しているといえる可能性が高いでしょう。なぜなら他の回答者が示さなかった、より深い洞察を読者へ提供するためです。スタック・オーバーフローのQ&Aモデルに立ち返れば、質問に投稿された回答は質問者だけのものではなく、将来にわたって同様の疑問を持った読者に向けて有益なことが望ましいはずです。数値計算のように、質問で明確に要求されていなくても、多くの読者にとって性能の評価が望まれている可能性が高いケースもあります。つまり、さまざまな回答が並ぶなかでそれらを要約し、その質問の文脈に沿った新しい視点を提供する回答であれば、回答として十分な品質だと考えます。そういった回答は、マイナス票が入れられる理由があったとしても、回答ではないとして一概に削除されるほど無益あるいは有害ではないと思います。
ただし、質問ではまったく求められておらず、かつ質問内容を取り巻く分野でも重視されていない評価指標を用いた評価は、無益なものと見なされマイナス票を投票されてしまうかもしれません。さらには削除されてしまう可能性もありますが、あくまでもそういったモデレーションは個別に判断された上で(微妙なケースはメタでの討議を経て)行われるべきです。